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こども性暴力防止法とは?保育現場で変わること・保育士に求められることを解説

1 時間前
読了時間: 10分

2026年12月25日から「こども性暴力防止法(日本版DBS)」が施行されます。


「名前は聞いたことがあるけれど、どんな法律なの?」

「保育園では具体的に何が変わるの?」

と疑問に思っている方もいるのではないでしょうか。


この記事では、こども性暴力防止法ができた背景から、保育園が実際に何を準備・変更する必要があるのか、保育士の仕事にどのような影響があるのかまで、わかりやすく解説します。



こども性暴力防止法(日本版DBS)とは?



「こども性暴力防止法」は、学校や保育所などで、職員による子どもへの性暴力を防ぐための法律です。


正式名称は「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律」といいます。


この法律では、職員の性犯罪歴を確認する仕組みに加えて、性暴力の早期把握や相談体制の整備、職員研修、疑いがある場合の調査、被害を受けた子どもの保護・支援などが求められます。


つまり、性犯罪歴を確認するだけではなく、性暴力を「起こさない・早く気づく・起きたときに子どもを守る」ための仕組みを整える法律です。



■ こども性暴力防止法ができた背景

教育・保育の現場では、大人が子どもを指導する立場にあるため、同じ子どもと長期間・繰り返し接することもあります。そのため、子どもが嫌だと感じても断りにくく、性被害にあっても周囲に伝えにくいという問題がありました。


こうした性暴力を防ぐため、これまでも教員や保育士を対象とした対策が進められてきました。



学校では、2021年に「教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律」が成立。性暴力によって教員免許を失った人のデータベース活用や、教員免許を再び取得する際の審査の厳格化などが進められました。


保育士についても、2022年の児童福祉法改正を受け、2024年4月から「保育士特定登録取消者管理システム」が運用されています。これにより、保育士を採用する際には、児童生徒性暴力等を理由に保育士登録を取り消された人などに該当しないか、データベースで確認することが義務付けられています。


ただし、これまでの仕組みには対象範囲に限りがありました。


保育士のデータベースで確認できるのは、保育士登録を取り消された人などに限られ、在職中の保育士は確認の対象外でした。また、子どもと接する仕事は教員や保育士だけではありません。


そこで、学校や認可保育所などに加え、認定を受けた認可外保育施設、学習塾、スポーツクラブなどにも対象を広げ、子どもと接する仕事を横断的にカバーする仕組みとして、こども性暴力防止法が整備されました。


このように、教員や保育士の資格管理の厳格化から、子どもと関わる幅広い仕事で性暴力を防ぐ仕組みへと、段階的に対策が広げられてきたことが、法律成立の背景にあります。



■ こども性暴力防止法はいつから始まる?

こども性暴力防止法は、2024年6月19日に成立し、2026年12月25日に施行されます。


施行までに準備が必要な事項も多いため、こども家庭庁は2026年9月に「義務事業者用準備ガイド Ver.1.1」を公開し、最低限準備すべき事項を具体的に示しています。




こども性暴力防止法では、どの保育施設が対象に?



すべての施設が同じ扱いになるわけではありません。


認可保育所、認定こども園、幼稚園などは、法律で定められた性暴力防止の取り組みを行う「義務対象事業者」です。2026年12月25日の施行後は、性犯罪歴の確認をはじめとする必要な措置を実施することが義務付けられます。


一方、認可外保育施設や放課後児童クラブ、学習塾、スポーツクラブなどは、要件を満たしたうえで任意で国の認定を受ける仕組みです。認定を受けた事業者は、法律に基づく性暴力防止の取り組みを行います。





こども性暴力防止法で保育園の実務は何が変わる?



こども性暴力防止法の施行後は、対象となる職員の性犯罪歴を確認するだけではありません。


保育園には、性暴力を未然に防ぎ、異変を早く把握し、疑いが生じた場合には調査や子どもの保護・支援まで行う仕組みを整えることが求められます。


具体的には、次のような対応が必要になります。こども家庭庁の施行ガイドラインでは、安全確保措置として「研修・早期把握・相談・防止措置・調査・保護及び支援」が整理され、これに犯罪事実確認や情報管理などが加わります。



■  子どもと接する職員の性犯罪歴を確認する

対象となる職員について、こども家庭庁の「こまもろうシステム」を通じて、特定の性犯罪歴があるかを確認する「犯罪事実確認」が始まります。


保育士は対象となり、事務職員や送迎バスの運転手などについては、実際の業務内容をもとに対象となるか判断します。


新たに対象業務に就く人は、原則として業務を始めるまでに確認が必要です。施行時点ですでに働いている対象職員についても、施行後3年以内に確認する必要があります。


そのため施行前には、誰が犯罪事実確認の対象になるのかを整理し、就業規則や採用時の手続などを見直しておくことが必要になります。準備ガイドでも、対象職員の範囲の決定や就業規則・採用募集要項の見直しが施行前の対応事項として挙げられています。


■ 子どもの異変を早期に把握する

法律では、性暴力のおそれを早く把握するための「早期把握措置」を実施することが求められます。


具体的には、子どもの心身や行動に変化がないか日常的に観察するとともに、発達段階や特性に応じて面談やアンケート等を行います。


保育園では、未就学児本人への面談やアンケートが難しい場合もあるため、丁寧な日常観察や、保護者等への面談・アンケートなどを活用します。


これまでの「子どもの様子を見る」という保育を続けるだけでなく、異変をどう把握し、気づいた場合にどう組織へつなげるかまで仕組みにすることがポイントです。


■ 子どもや保護者が相談できる体制を整える

子どもが性暴力について相談しやすい体制を整えることも義務付けられます。


園内では、相談員を選任する、または相談窓口を設置して周知する必要があります。さらに、園外の相談窓口についても知らせます。準備ガイドでも、この2つが相談体制として明示されています。


保育園では子どもの年齢や発達段階を踏まえ、保護者から相談できるルートも含めて、利用しやすい方法を整えることが重要です。


■ 性暴力のおそれがある場合は「防止措置」をとる

犯罪事実確認の結果や、日常観察、相談などから、職員による性暴力が行われるおそれがあると判断した場合には、子どもへの性暴力を防ぐための措置を講じます。


例えば、対象となる職員を子どもと接する業務から外したり、配置転換を検討したりすることなどが考えられます。


性犯罪歴が確認されたからといって、自動的に解雇される仕組みではありません。労働法制にも配慮しながら、性暴力のおそれに応じて必要な措置をとることが求められます。施行ガイドラインでも、「防止措置」は法律上求められる安全確保措置の一つとして整理されています。


■ 性暴力の疑いが生じたら調査する

性暴力や不適切な行為の疑いを把握した場合には、単に様子を見るのではなく、事実関係を確認するための調査を行う必要があります。


そのため園では、あらかじめ、


  • どのような場合に報告するのか

  • 誰に報告するのか

  • 何を報告するのか

  • 報告後に誰がどのように対応するのか


といった報告・対応ルールを決めておきます。


こども家庭庁の準備ガイドでも、報告方法・報告先・報告内容と、その後の対応者・対応事項・対応手順を定め、職員や子ども、保護者へ周知することが求められています。


疑いの段階から組織として対応し、必要に応じて関係機関とも連携しながら調査を進めます。


■ 被害を受けた子どもを保護・支援する

調査だけで終わるわけではありません。


性暴力を受けた、または受けた疑いのある子どもについては、安全を確保し、必要な保護・支援を行うことも法律上求められます。施行ガイドラインでは「調査」と「保護及び支援」がそれぞれ明確な措置として位置付けられています。


加害が疑われる職員との接触を避けるほか、子どもの状況に応じて保護者や専門機関等と連携し、必要な支援につなげます。


■ 職員に性暴力防止の研修を受けてもらう

対象となる職員には、性暴力防止に関する研修を受講させることが求められます。

研修では、


  • 性暴力や不適切な行為とは何か

  • 子どもの異変やサインにどう気づくか

  • 疑いを把握した場合にどう報告するか

  • 被害を打ち明けられた場合にどう対応するか


などを学びます。


研修は単なる推奨事項ではなく、法律上求められる安全確保措置の一つです。施行ガイドラインでも、対象業務従事者への研修が明記されています。


そのため施行前から、対象職員を整理し、研修の受講計画を立てて実施しておく必要があります。準備ガイドにも「従事者向け研修の計画策定・実施」が施行前の対応事項として挙げられています。


■ 性犯罪歴などの情報を適切に管理する

犯罪事実確認によって得られる性犯罪歴は、非常に機微性の高い情報です。


そのため園や運営法人は、情報管理規程を作成し、犯罪事実確認に関する情報を適切に管理する体制を整える必要があります。


具体的には、情報を扱える職員を必要最小限にすることや、アクセス管理、端末・電子媒体の管理などが求められます。施行ガイドラインでは、犯罪事実確認記録等の管理、目的外利用・第三者提供の禁止、漏えい時の対応、廃棄・消去まで詳しく定められています。


重大な情報漏えい等が発生した場合には、こども家庭庁への報告も必要です。


■ 取り組み状況を定期的に報告する

法律への対応は、制度やルールを整えて終わりではありません。


民間の義務対象事業者は、法律に基づく措置の実施状況について、原則として年1回、こども家庭庁へ定期報告を行う必要があります。 


毎年4月末日時点の状況を5月末日までに報告する仕組みで、2027年は施行直後のため定期報告を行わず、初回の報告期限は2028年5月31日とされています。なお、国や地方公共団体などは、法律に基づくこども家庭庁への定期報告の対象外です。


定期報告では、犯罪事実確認だけでなく、安全確保措置や情報管理措置などの実施状況も確認されます。


つまり、こども性暴力防止法では、「性犯罪歴を確認する」だけでなく、日頃の予防から異変の把握、相談、疑いが生じた場合の調査・保護、情報管理、その後の報告までを一連の仕組みとして運用することが求められます。




こども性暴力防止法で保育士の仕事はどう変わる?



法律上の義務を負うのは、基本的に保育士個人ではなく、保育園や運営法人などの事業者です。ただし、現場で働く保育士にも次のような対応が求められます。


  • 性暴力防止研修を受ける

  • 犯罪事実確認に必要な情報提出に対応する

  • 「不適切な行為」や報告ルールを理解する

  • 日常の保育で子どもの変化に注意する

  • 性暴力や不適切な行為の疑いに気づいたら、園のルールに沿って報告する


つまり、保育士同士を監視する制度ではなく、子どもの変化や不適切な行為に気づいたとき、個人で抱え込まず、園の仕組みに沿って対応することが重要になります。




まとめ



こども性暴力防止法は、子どもと関わる職員の性犯罪歴を確認するだけの法律ではありません。


認可保育所や認定こども園などには、犯罪事実確認に加えて、子どもの日常観察、定期的な確認、報告・対応ルール、相談窓口、職員研修、不適切な行為のルール化、情報管理などを一つの仕組みとして整えることが求められます。


これまで保育現場で行われてきた「子どもの変化に気づく」「気になることを共有する」といった取り組みも、性暴力の早期把握という目的のもとで、園として実施・報告する法的な仕組みの一部になります。


施行に向けて、まずは自園でどの対応がすでにできていて、どのルールや体制を新たに整える必要があるのかを確認することが大切です。


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