待機児童ゼロの次に見えてきた、保育の「偏り」という課題

近年、全国的に待機児童数は減少傾向にあります。
その一方で、希望する園に入れない家庭が残る地域もあれば、園児数の減少を受けて、保育園の統合や閉園を検討する地域もあります。2026年度からは「こども誰でも通園制度」も全国で実施され、保育の利用方法そのものが広がり始めました。
いま起きている変化は、「保育園が足りない」という一言だけでは捉えきれません。最近の保育関連ニュースから、その背景を考えます。
最近の保育ニュースに見る、3つの変化

■ 待機児童ゼロでも「希望通りに入れない」地域がある
横浜市では、2026年4月時点の待機児童数が前年に続いて「0人」となりました。
ただ、希望する保育所に入れなかった家庭がいないわけではありません。港北区では、「保留児童」が312人にのぼると報じられています。
背景には、保育を希望する家庭の増加もあります。横浜市全体の就学前児童数は10年前より減っている一方、保育所の申請率は33.3%から53.0%まで上昇しています。
■ 園児数の減少により、統合・閉園を検討する自治体も
一方、新潟県十日町市では、まったく異なる課題が見え始めています。
市内では就学前児童数の減少が続き、15年後には現在の半分ほどになる見通しです。こうした状況を受け、市は園児数が20人を下回る公立保育園について、周辺に代わりとなる施設がある場合は、統合や閉園を検討する方針を示しました。
「保育園が足りない」のではなく、今ある園をどう維持していくのか。地域によっては、すでにそんな課題に直面しています。
■ 「こども誰でも通園制度」で、保育の役割が広がる
2026年度からは、「こども誰でも通園制度」も全国で始まりました。
これまで保育所等を利用する機会が少なかった家庭でも、保護者の就労状況にかかわらず、一定時間、子どもを預けられるようになります。
毎日通うことを前提としない、新しい保育の利用方法が広がり始めています。
保育の課題は「一律な不足」から「地域ごとの偏り」へ

これらのニュースから分かるのは、保育の課題が単純な「施設不足」ではなくなっているということです。
希望する園に入れない地域がある一方で、園児数の減少によって施設の維持を見直す地域もあります。そこに、短時間・不定期という新しい利用ニーズも加わっています。
今起きているのは、全国一律に保育が足りないというより、必要とされる保育と実際の受け入れ体制との間に、地域ごとのずれが生まれている状態だと考えられます。
■ 子どもの数が減っても、保育需要は同じようには減らない
厚生労働省の人口動態統計によると、2025年の出生数は67万1,236人で過去最少、合計特殊出生率も1.14で過去最低となりました。
しかし横浜市では、就学前児童数が減る一方、保育所の申請率は10年で33.3%から53.0%まで上昇しています。
ここで注目したいのは、子どもの数そのものではなく、そのうち何割が保育を希望するかです。仮に子どもの数が減っても、利用を希望する家庭の割合が上がれば、必要な受け入れ枠は同じようには減りません。
さらに、需要は年齢によっても偏ります。横浜市では保留児童の多くが1・2歳児に集中しており、園全体の定員に余裕があっても、必要な年齢の枠が足りないことがあります。
参照:令和7(2025)年 人口動態統計月報年計(概数)を公表します|厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai25/dl/gaikyouR7houdou.pdf
■ 保育を必要とする家庭や利用方法も変わっている
「こども誰でも通園制度」によって、これまで保育所等を継続的に利用していなかった家庭にも利用機会が広がります。
毎日通うのか、短時間だけ利用するのか。どの年齢で、どのような支援を必要としているのか。家庭によって求める保育のかたちは異なります。
保育需要は「地域に何人の子どもがいるか」だけでは決まりません。地域の人口構成や家庭の状況、利用方法の変化が重なることで、必要とされる保育と既存の受け入れ体制に偏りが生まれやすくなっています。
これからは「保育を増やす」より「地域に合わせる」へ

■ 空きスペースを、需要の高い年齢の受け入れに活かす
こうした偏りへの対応策の一つが、すでに横浜市で行われています。
「年度限定保育事業」は、保育所等の空きスペースや余裕のある保育室を使い、通常の利用調整で保育所等を利用できなかった1・2歳児を、1年度限定で受け入れる仕組みです。
背景にあるのは、先ほど触れた年齢ごとの偏りです。
横浜市では特に1歳児の受け入れ枠が不足する一方、新設保育所等では4・5歳児枠に空きスペースが生じる場合があります。そこで、使われていないスペースを、需要の高い1・2歳児の受け入れに活用しています。
園全体の定員を一律に増やすのではなく、「どこが空いていて、どこが足りないのか」を見て、今ある資源の使い方を変える事例です。
■ 利用時間や頻度に合わせて、受け入れ方を分ける
受け入れる「人数」だけでなく、「利用の仕方」に合わせて枠を分ける動きもあります。
東京都墨田区の2026年度「こども誰でも通園制度」では、「1日2.5時間×月4日」「1日5時間×月2回」などの定期利用枠に加え、空きのある施設へ申し込む柔軟利用枠を設けています。
実施方法も一つではありません。専用室で受け入れる施設、在園児と同じ部屋で受け入れる施設、既存の空き定員を活用する施設があります。
毎日通う子どもと、月に数回利用する子どもを、同じ枠組みだけで考えない。利用時間や頻度に応じて受け入れ方を分けることで、新しい需要に対応しています。
もちろん、認可定員や対象年齢を園の判断だけで自由に変更できるわけではなく、制度上の条件や自治体との調整もあります。
それでも、自園の空きはどの年齢に出ているのか。地域では、どの年齢の受け入れが足りていないのか。短時間や不定期の利用ニーズに、今あるスペースを活かせないか。
横浜市と墨田区の事例から見えてくるのは、「保育を増やす」以外にも、需要に合わせて受け入れ方を組み替える選択肢があるということです。
まとめ

少子化が進むほど、地域全体の子どもの数だけで、自園のこれからを判断するのは難しくなります。
見るべきなのは、空きが出ている年齢と、希望が集まっている年齢。さらに、毎日通うのか、短時間なのか、不定期なのかという利用の違いです。
自園にある空きと、地域で足りていない受け入れ方をどうつなぐか。
これからの園運営では、そんな視点も必要になりそうです。



