なぜ「不適切保育」は起きてしまうのか|背景と事例から考える防止の第一歩
- emcjpn
- 2 日前
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更新日:10 分前

近年、不適切保育のニュースが相次ぎ、保育現場への注目が高まっています。
「うちの園は大丈夫かな?」と感じる先生も多いのではないでしょうか。
不適切保育は、特別な園だけで起きるものではありません。
どんな園でも、忙しさや思い込みの中で“気づかないうちに”起こってしまうことがあります。
ここでは、具体的な事例を通してその背景と原因を整理し、園としてどんな備えができるかを考えます。
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不適切保育の定義と主な事例

「不適切保育」とは、子どもの安心や尊厳、安全を損なう保育のことを指します。厚生労働省は、「児童の心身に不利益を与える、またはそのおそれがある保育」と定義しています。
例えば、このような事例が報告されています。
午睡せずにぐずる園児に対し、「早く寝なさい!」と強い口調で言い、布団を無理にかぶせてしまった。
給食が進まない園児に「残さず食べなさい」と繰り返し促し、涙を流させながら食べさせてしまった。
集団活動の時間に一人で動き回る園児を制止しようとして、腕を強く引っ張ってしまった。
感情的に叱ってしまい、その後にフォローを入れられず、子どもがしばらく萎縮してしまった。
これらの多くは、意図的ではなく、日常の中の「焦り」や「無意識の判断」から生じています。
「自分の園では関係ない」と思っていても、どの現場にも起こり得るリスクなのです。
意図せず起きる背景と原因

多くの不適切保育は、保育士さんの“意図”や“悪意”によるものではありません。
その多くは、現場の状況や園内の価値観が重なり合って、知らず知らずのうちに適切ではない関わりを生んでしまうところにあります。
■「時間に追われる」中で起きるもの
保育現場は常に多忙です。限られた人員と時間の中で、着替え・食事・午睡・活動準備などを同時並行で進める必要があります。
「早く片付けないと」「予定通り進めなきゃ」という焦りが、子どものペースを待つ余裕や、一人ひとりへの丁寧な関わりを奪ってしまうことがあります。
その結果、子どもが泣いたり嫌がったりしても、つい「今は仕方ない」と受け流してしまう。こうした積み重ねが、保育士本人の意図とは裏腹に“望ましくない対応”につながるケースが少なくありません。
■ 園での価値観や「こうあるべき」という期待の中で起きるもの
一方で、園全体に根づいた価値観や「保育はこうするもの」「この年齢ではこうできて当然」という暗黙の価値観や期待が、保育士の判断に影響することもあります。
たとえば、「活動はみんなで揃って参加するべき」「泣いている子も頑張らせるのが成長につながる」といった思い込みが、子どもの気持ちより“集団としての姿”を優先する行動を生むことがあります。
また、「自分だけ休ませるのは他の職員に迷惑かも」「先輩がそうしてきたから」といった組織内の空気が、職員一人ひとりの柔軟な判断を妨げることもあります。
保育士さんの“意図”や“悪意”によるものではないからこそ、現場全体で課題として捉えることが大切です。一人ひとりを責めるのではなく、仕組みや環境の改善を考える視点が、不適切保育の予防につながります。
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園の信頼を失うリスクと対応の難しさ

不適切保育が発覚すると、子どもや保護者だけでなく、職員間の信頼・園の社会的評価が揺らぎます。
実際、保護者の約92.7%が「不適切保育のニュースをきっかけに保育現場での対応を以前よりも気にするようになった」と回答しています。
しかし、何が「不適切」と見なされるかは明確に線引きできず、対応に迷う場面も少なくありません。
だからこそ、問題が起きてからではなく、「起きる前に気づき・話せる環境」を園全体でつくることが最も大切なのです。
まとめ

不適切保育は、誰の園にも起こり得る“すぐそばの課題”です。
大切なのは、完璧を求めることではなく、「今日の関わり、あれでよかったかな」と振り返り合える空気を育てること。その一歩が、子どもも職員も安心して過ごせる保育につながります。
次回は、園で実践できる「不適切保育チェックリスト」の作り方と活用法をご紹介します。
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