保育業界にも”DX”って必要?いま注目されている理由と、はじめの一歩(前編)
- emcjpn
- 2 日前
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更新日:1 日前

保育現場では、子どもの成長を支える保育に加えて、記録や保護者対応などの業務も多く、負担が大きくなっています。加えて、保育士不足も続き、限られた人手でなんとか日々の業務を回している園も少なくありません。
そんな中で注目されているのが「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」です。デジタルを活用して業務負担を減らし、保育士が子どもと向き合う時間を確保する動きが広がりつつあります。
この記事では、なぜ今保育業界にDXが必要とされているのか、そして導入によってどのような変化が生まれているのかを紹介します。
いま、保育現場に“変化”が求められている理由

近年、保育業界では保育士不足や業務負担の深刻化が続いています。
厚生労働省「職業安定業務統計」によれば、2022年10月時点における保育士の有効求人倍率は3.54倍とされています。前年同月比では上がっており、全職種の平均が1.35倍であることを考えても、高い水準で推移しています。
一方で、保護者のニーズは多様化し、保育の質も高いレベルが求められるようになりました。現場では人手不足が解消されないまま、書類作成や保護者対応、職員間の情報共有といった業務が膨れ上がっており、現場の負担は年々重くなっています。
このような中で、保育の質を維持・向上しながら、働きやすい環境を整えるための有効な手段として、「DX」が注目されているのです。
実際にこども家庭庁では「保育所等におけるICT化推進事業」として補助金によるDX支援も行っています。
保育DX向けに公開されている補助金について、より詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
そもそも「DX(ディーエックス)」ってなに?

DX(デジタルトランスフォーメーション)と聞くと、少し難しそうに感じる方もいるかもしれません。
しかし、保育現場におけるDXを一言で表すなら、 「先生たちの仕事をもっとラクにするための工夫」です。
DXとは、デジタルの力を使って、今まで当たり前に行っていた仕事のやり方を見直し、 もっと安全で、負担の少ない形に変えていくことを指します。
たとえば、こんな取り組みもDXの一例です:
■ 紙の連絡帳 → アプリに切り替え
これまでは、毎日保育士が手書きで連絡帳を書き、保護者とのやり取りも紙や口頭で行っていました。しかし、アプリを使うことで連絡帳の記入・確認がパソコンやスマホから簡単にできるようになります。
導入のメリット:
転記や記録の手間が減り、負担が軽くなる
保護者への共有もリアルタイムでスムーズに
写真や動画も添付でき、園での様子が伝わりやすい
データとして蓄積され、後からも確認しやすい
アプリ化することで、先生・保護者ともにコミュニケーションの質が向上し、負担の軽減にもつながります。
■ 職員会議の議事録 → デジタルで共有
これまでのように紙で議事録をまとめてファイルに保管する方法では、共有や検索が手間になりがちでした。
Googleドライブや保育支援アプリを使えば、会議の記録はすぐにデジタルで共有・保存できます。
導入のメリット:
会議終了後すぐに情報を共有できる
過去の議事録をすぐに検索・閲覧できる
職員間の情報格差や「聞いていない」が減る
結果として、会議の質も上がり、「伝わらない」「抜け漏れる」といった悩みの軽減にもつながります。
■ 午睡チェック → 午睡センサーで自動化
これまでは、5分おきに子どもの呼吸や体勢を目視で確認し、手書きで記録していた午睡チェック。しかし、午睡センサーを導入することで、子どもの状態をセンサーと人のダブルで見守り、自動記録までも行えるようになります。
導入のメリット:
センサーが常時チェックし、異常があればアラート通知
午睡チェックが自動化され、保育士の負担が大幅に軽減
安全面も強化され、安心して見守りができる
単に業務負担が減るだけでなく、子どもに目を向ける「心の余裕」も生まれるのが大きなポイントです。
DX化により保育現場で起きている変化の例

子どもに向き合える時間が増える
保育現場では、書類作成や記録作業に多くの時間が取られがちだと思います。デジタルツールやアプリを導入することで、これらの業務負担を減らすことができ、時間を大幅に削減することが可能です。その結果、保育士は子どもと向き合う時間や、保育の準備に使える時間が増え、より充実した保育を実現できます。
保育士間のストレス軽減
デジタルツールを使った情報共有や、アプリでの連絡が進むことで、保育士間の引き継ぎや連携がスムーズになります。これにより、伝え忘れや認識のズレも減り、保育現場のコミュニケーションが改善。ストレスが軽減され、より協力的な職場環境が作れます。
午睡チェックの自動化
午睡チェックにセンサーを導入することで、5-10分ごとの手動による午睡チェックが不要になり、保育士の業務負担が大幅に軽減されます。これにより、保育士が子どもにより集中できる環境が整います。さらに、園児がうつぶせ寝をした際には即時アラートが出るため、より高い安全性が確保され、保育士の心理的な負担も軽減されるでしょう。
具体的なDX施策については後半でご紹介します!
まとめ

DXは特別難しいことではありません。「業務を少しでも楽にしたい」「もっと子どもたちと関わる時間を増やしたい」という想いを形にする手段です。
まだDXに取り組んでいない保育園も、少しずつで構いません。できるところから始めることで、現場の変化を実感できるはずです。
次回の記事では、いざDXを導入しようと思ったときに感じる「不安」や「ハードル」、そしてそれを乗り越えた保育園の具体的な事例をご紹介します。ご興味のある方は、ぜひ引き続きご覧ください。