保育は量から質の時代へ。ICTやAIの活用でどのように変わっていくのか。

待機児童数は4年前から78%も減少


核家族化や共働きの家庭が増えたことによって、待機児童数が問題視され始めてから、行政が積極的に保育施設における受け入れ枠数増加の対策を行ってきました。


具体的には、平成25年度から施行されていた待機児童解消加速化プランで約50万人分の定員数増加と平成30年度からの子ども安心プランでの約32万人の定員数増加に加えて、令和3年度から施行されている新子育て安心プランでさらに14万人分の保育施設における定員数増加の対策が行われています。


※厚生労働省「新子育て安心プラン」より筆者作成



これらの施策の結果として、2017年には日本全国で最大約26,000人ほどいた待機児童数は、2021年4月時点においては約5,600人程度にまでに減少しており、たった4年ほどで大きく受け入れ体制が整ってきたと言える状況があります。

※厚生労働省「令和3年4月の待機児童数調査のポイント」より筆者作成



保育施設へは預けやすい状況に


この要因としては受け入れ枠数の増加だけではなく、コロナ禍による影響で出生数が減少していること、親が子どもを預けるのを控えているという調査結果がありますが、結果として保育施設に預け入れたい人が預け入れやすくなっているという実情が伺えます。


このような状況からも、保育施設において子どもを受け入れる「量」が重要視さえていた段階を脱しつつあり、これからは子どもたち一人ひとりに対する保育の「質」がより一層重要度が増してくることに注目されています。



国が主導していく保育の質とは


厚生労働省の子ども家庭局が主導する検討会として、2018年から2020年にかけて「保育所等における保育の質の確保・向上に関する検討会」が実施され、考え方や今後の展望に関して取りまとめが行われました。

審議会の参考資料においては、保育の質は「内容」「環境」「人材」の3つの観点で考えることができ、それぞれの観点に関連して今後の保育の質の向上に資する取り組みを推進していくと明記してあります。


また、審議会の取りまとめ資料においては、保育の質とは子どもの 経験の豊かさと、それを支える保育士等による保育の実践や人的・物的環境からその国の文化・社会的背景、歴史的経緯に至るまで、多層的で多様な要素により成り立つものであると記されており、常に「子どもたちにとってどうか」という視点を中心に考えることが重要だとされています。

※厚生労働省「保育所等における 保育の質の確保・向上に関する基礎資料 」より筆者作成



ICTやAIの活用はどのような影響があるのか


また、経済産業省が主導する検討会においては、保育現場のICT化に関して平成29年から30年にかけて議論と取りまとめが行われ、その後も各保育施設におけるICT化が推進されています。

この審議会の取りまとめ資料おいては、保育における「質」の向上が重要な課題であると位置づけられており、現場の保育士等の業務の負担が大きいことから保育に専念できる環境作りを求める声があることからも、保育士等の業務負担軽減は喫緊の課題であるとしています。


これらの議論等を踏まえた上で、「保育の質」「ICT化の推進」とを掛け合わせて考えた場合、保育の質における「内容」や「人材」という観点においてはオンラインシステムによる保育士等への研修プログラムや意見交換の場の提供がより保育におけるガイドライン等の徹底や人材の資質向上につながることが期待されます。


また、「環境」という観点においては業務効率化や保育に関するデータ蓄積に伴う保育業務の改善やカメラやセンサーなどを活用した見守りによって、事故防止に寄与することが期待されます。




今後の展望のまとめ


これまで、保育施設における待機児童数の減少から保育の質に関する考え方、ICT・AIの活用についてまとめてきました。

どの業界においても、業務効率化や質の向上に向けてICT化やAIの導入が推進されていますが、保育業界においても例に漏れず、「子どもたちにとってどう影響するのか」という視点を中心にして、より一層の保育現場における業務や環境の改善が進められていくことが予想されます。